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ぷるぷる大陸物語 第8話 ~漁師の天敵1~

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 『ぷるぷる大陸物語』についての概要、キャラクター設定、第1話へのリンク等は、

『ぷるぷる大陸物語』-概要

をご覧ください。

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ある日、俺はスレイから呼び出しを受けたので、お気楽3人衆と共に役所へ向かった。

俺を呼び出すとは、なかなか良い度胸をしている。・・・と思ったが、俺は無名の魔術師、相手は役人だから当然か?

 

「やあハインツさん、良く来てくれました。」

「用があるならそっちから来い。」

俺は呼び出された不機嫌さを隠さず、できるだけぶっきら棒に言ってやった。

「ちょっとハインツ。失礼よ。」

アストリアがまともな事を言う。俺は余計不機嫌になった。

「これは失礼しました。良い話なので早くお伝えしたくて。今度からは伺いますね。」

「良い話?」

俺は少し機嫌が直った。

「はい、実は今プルパール港町でスクジェルという生き物が大量発生し、大きな被害が出ているのです。王国兵士や手練れの魔術師たちが対応しているのですが、全く効果が無く、打つ手なしの状態なのです。この状態が続けば、漁師は海に出られず、我が国民は海産物を手にする事ができなくなります。食糧難にも見舞われるでしょう。」

「それのどこが良い話なんだ?」

「ここからが本題です。私が上に掛け合って、スクジェルの一件は懸賞金をしっかり賭けるべきだという事になりました。その金額が100万リポです。」

「おおお!乗った~!」

トルキンエがその金額に飛びついた。

「お前、策はあるのか?」

まさかとは思ったが、とりあえず聞いてみた。

「もちろんさ。ハインツと一緒に行く。そして解決するまで見ててやる!」

そんな事だろうと思った。

「どうです?あなた向きの良い話でしょう?」

スレイが不敵に笑った。

俺はそんなスレイを無視して、スクジェルについて想いを馳せていた。

 

スクジェルとはイカのように素早く泳ぐクラゲの事だ。見た目はイカのようだが全く美味しくないだけでなく、人間が好む魚を食べてしまうので漁師の天敵と言われている。

毒を持っていて海面から飛び跳ねて船上の人を襲う事もあるが、毒そのものはとても弱く数時間ほっとけば治る程度だ。

魔法を使う訳でもない為、危険生物という概念からは程遠く、はっきり言ってこんな生き物に100万リポはやり過ぎ感がある。

スレイの奴が上手く『上』とやらを言いくるめたに違いない。

「ひとつ、気を引き締めてもらう為に、注意しておきます。」

そう前置きをしてスレイが言った。

「被害は漁に出られないだけに留まらず、スクジェルの毒による被害も報告されています。まだ死者は出ていませんが、重傷者が多数出ているのです。」

「は?毒は弱いと思っていたが?」

「はい、1匹の毒はそれほど怖くありません。しかし大量のスクジェルに襲われると全身に毒が回り、最悪の場合、死に至る可能性もあります。そして、それほど大量発生しているのです。」

「げ、やっぱやめようか?」

トルキンエがさっと手のひらを返したのが面白かった。

「いや、行こう。やめるかどうかは見てから判断しても遅くない。トルキンエは行かないのか?」

「いくさ、ハインツが行くなら当然行くに決まってるだろ!」

特に決まってはいないと思うが、そこは突っ込まないでおこう。

他の2人も当然行くらしい。どうせお気楽3人衆は何も考えていないのだろう。

『そんな事ないよ。私は考えた!ハインツがスクジェルと話し合っていなくなってもらえば良いんだよ!』

本気でそれができると思うなら、口で言え。というか、なぜ交渉役がアストリアじゃなく俺なんだ?

ともかく、出発する事にした。

 

 

スレイがプルボードに乗って行こうと言うので便乗させてもらう事にした。

プルボードとは魔法の力で浮いて移動する乗り物だ。

今は安全なプルプール王国とプルパール港町を往復するだけの乗り物になっている。

他の町や村へ行くには危険動物が多数いて、すぐに壊されてしまうからだ。

プルパール港町へは歩けば4~5時間かかるが、プルボードに乗れば20分ほどで着く。

夢のような乗り物だが運賃は片道1万リポと法外な値段だ。

お役人には5人分出しても全く痛くないらしいが、もし俺達だけで行くなら絶対歩く事になるだろう。

 

「なあスレイ。せっかくの機会だからプルボードの動力部を見ることはできるか?」

「ええ、見るだけならできますよ。私が話をつけてきましょう。」

本当に、何者なんだ?これだけ腰が低いのに、色々な所に顔が利くようだ。

いつも1人で役所にいるだけだから左遷でもされたのかと思っていたが、凄腕なのかもしれない。

「ハインツさん、良いそうですよ。どうぞこちらへ。」

 

スレイの後をついていくと、プルボードのほぼ中央部の部屋に着いた。

そこには小さな炉があり、中に石が積まれていた。

俺はそれを見た瞬間、驚愕した。

石が一瞬プルプルの体のようになった後、プルに変換されて動力になっていたのだ。

それが視えるのは俺だけなのだろう。

普通の人には自然と石が溶けて無くなっているように見えるに違いない。

この石はプルカチ鉱石と呼ばれ、大陸の至る所で採る事ができる。

この石もまた、プルプルと同じく、プルの集合体だったのだ。

もしかして、プルプルは死ぬと消えると思われていたが、小さく凝縮してプルカチ鉱石となり積み重なっているのか?

まさか、この大陸は・・・

いや考えるのはやめよう。今まで信じていた足元が妙に不安定なプルプルとした物のように思えてきた。今は乗り物に乗っていて大地に足をつけている訳でもないというのに。

 

 

プルパール港町に着いた。

「さっそく港に行ってみましょう。すぐ近くでスクジェルが見えるそうですから、くれぐれも毒には気をつけてください。今プルパールの病院はどこも満員で受け入れできないそうですから。」

「トルキンエは治癒魔法を使えるが、無駄な魔法は使いたくないそうだから、お前も気をつけろよ、スレイ。」

俺はとりあえずトルキンエの紹介をしておいた。

今ので魔法の種類と性格がきちんと伝わるだろう。我ながらナイスな紹介だ。

 

港に着くと、遠くに海が見えているのに王国兵士たちが塞いでいて近づけなくなっていた。白い制服を着ているからこいつらは幼龍団だ。

王国兵士は7つの部隊に分かれていて、それぞれ制服の色とエンブレムで見分けが付くようになっている。

幼龍団は王国兵士になりたての新米訓練生の為の部隊だ。新米訓練生なので、エンブレムはついていない。

幼龍団に階級は無い。地龍団と呼ばれる王国兵士の最もエリートとされる部隊から訓練を受ける事になる。

 

こいつらに何を言っても無駄だ。

恐らく誰も通すなと命令されているのだろう。愚直にそれを遂行するだけだ。

 

俺たちは黒い制服を着ている王国兵士を探した。

地龍団の制服は黒と決まっていて、王冠のエンブレムを付けているのだ。

「おお、スレイじゃないか。久しぶりだな。噂は聞いているぞ。」

探していた地龍団の王国兵士が向こうから話しかけてきた。

「あ、叔父さん。仕事で来たので通してもらえませんか?」

「叔父さん…?」

俺は半分驚き、半分納得した。

「お前、この件で懸賞金100万リポ賭けさせたそうじゃないか。金で解決できる問題なのか?」

「いいえ、金だけでは解決できないでしょうね。でも解決できる将来有望な魔術師を知っているので、その方に仕事に見合う報酬を与えたかっただけですよ。」

「大きく出たな、その魔術師を紹介してくれないか?」

「もちろんです、こちらが将来有望な魔術師のハインツさんと仲間たちです。」

「お?おう、よろしく。」

いきなり見知らぬおっさんに紹介されたので適当に挨拶すると、ユエルドが俺を制止して前へ出た。

「お初にお目にかかります。ユエルドと申します。こちら我々のリーダーのハインツです。若輩者ですが、何卒よろしくお願い致します。スタン・フォン・デルバット総司令官。」

総司令官?なんか偉そうな名前だな。

『偉そうじゃなくて、偉いのよ。この人、王国兵士の中で一番偉い人なの!』

アストリアが解説してくれた。なるほどね。そりゃ利用できそうだ。

『利用するんじゃなくて、利用していただくの!立場が違い過ぎるわ!』

アストリアの心の声がぎゃーぎゃーと頭に響く。

「まあ、そう堅くならなくて大丈夫ですよ。スタンさんは私の叔父で気さくな人ですから。」

スレイがフォローした。ほらみろ、平気じゃないか。

「まあ、よろしくな・・・むぐっ」

アストリアに口を塞がれた。

「はっはっはっ、元気そうな若者だね。スレイが見込んだ実力を是非見せていただこう。こちらこそよろしくなっ。」

スタンはニコッと笑って港の警備を一部解いた。

 

 

港の傍まで寄ってみると、想像を絶するほどのスクジェルが海面に浮いていた。

沖の方まで黒く見えるのは全てスクジェルの群れなのだろうか?

と考えていると俺達の人影に反応したのか、十数匹のスクジェルがこちらに飛び跳ねてきた。

アストリアが目にもとまらぬ速さで、自分に向かってきた3匹のスクジェルを射抜いた。

「あう~、気持ちわる~ぃ。全部射抜けなかった~」

こいつ、腕が上がっている。既に俺を超えている。あの速さで3匹射抜ければ達人の域だろう。つい先日まで1ミリも前に飛ばなかったというのに。

「どうだ、アストリア。話し合いはできそうか?」

「ムリだよ~。こんなに沢山いたら、何がなんだかさっぱり分からないよ~」

しかたない。

俺はアストリアの手を握り集中した。

「あら、お熱いわね~」

トルキンエが茶化す声が聞こえたが、無視だ。

スクジェルが興奮している?

俺達が近づいたからなのかどうかは分からないが、とにかく全てのスクジェルが興奮状態だった。

「おい、スレイとスタン。夜にまた来ても良いか?」

「ああ、もちろんだとも。何か分かったかね?」

「まだ初めて見たばかりだから全く分からないが、どうやらこいつらかなり興奮してやがる。まずはその原因を調査させてもらう。何度か見に来るから幼龍団のやつらに話を通しておいてくれ。」

「お安い御用だ。こちらも何か手伝える事があれば何でも言ってくれ。この件は王国中が困っているのでね。」

やはり、利用価値は絶大だな。

スレイの叔父が王国兵士団の総司令官という事は、このパイプはもっと広く繋がっているかもしれない。

 

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