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ぷるぷる大陸物語 第4話 ~猪突猛進に終止符を3(終)~

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『ぷるぷる大陸物語』についての概要、キャラクター設定、第1話へのリンク等は、

『ぷるぷる大陸物語』-概要

をご覧ください。

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「どんな具合だ?」

俺は持ち帰ったプルプルの面倒を見ているアストリアに尋ねた。

 

プルプルは昨日、助けた後も怯えているようだった。アストリアが言うには、恩を感じるどころか、人間に捕まり怯えているらしい。

せっかく助けてやったのに、これでは適当に捕まえてきたのと変わらない。

とりあえず様子を見る為に、プルプルの声を聴けるアストリアに預けていた。


「あまり昨日から変わらないわ」

『それならアストリアには新しい魔法を覚えてもらう時かもしれないな。』

と思ったら読み取られた。

「新しい魔法?」

「ああ、お前は相手の心が読めるが相手の心に伝える事はできないだろう?それをできるようになって欲しい。」

「そんな事できる訳ないでしょ」

「いや、できるはずだ。俺はお前の魔法がどのような仕組みで行われているのかを知っている。それを少し工夫するだけの事だ。」

「そんな事言ったって・・・」

ぐずぐず言うアストリアの手を素早く取り上げ握った。

俺は目を閉じて集中する。アストリアのオーラを感じ取った。

『お前の名前は?』

プルプルに対して質問をしてみる。

『プルニー』

「ほらみろ。できるじゃねーか。」

「ええ!何それ!?凄いね~」

「『凄いね~』じゃない、お前がやるんだよ。今のでコツは掴んだだろう?」

「うんうん。何となく分かった~」

「じゃ、後は頼んだ。」

俺はそう言い残して、その場を後にした。

 

 

居住区を抜け、職人街へ向かった。そこには古くからの知り合いのサネアツの家がある。

こいつは非魔術師だが、様々な道具を作る事ができる。

俺はサネアツの部屋に無言で入り、サネアツが過去に作った道具を物色した。

「何の用だ?」

昔からこんなやりとりを何度した事だろう。俺がサネアツを訪ねる時は決まって何か作って欲しい時だった。

俺はサネアツを無視して物色を続ける。昔作った道具を改造してもらおうと思ったのだが、それが見当たらないのだ。

「おい、そこのニッパーよこせ。」

サネアツも俺に構わず何か作っている。俺を見もせず差し出された手にニッパーを握らせたところで、ようやく目当ての道具を見つけた。

「これを改造して音が出るようにしてくれ。」

そう言って一つのボールを拾い上げた。

これは子供のオモチャ用に昔作ったボールで、とてもよく跳ねる。

「なんだ?子供でもできたか?」

「要らん詮索は後にしろ。できるか?」

「ボールの中に小さいガラス玉を入れれば音が出るだろう。」

「持ち運ぶ時に音が出ると困る。跳ねた時だけ音が出るようにしろ。」

「いちいち面倒な事を。笛でも付けるか。中の空気が抜ける時に音が出れば良いだろう。」

「よし、それで頼む。急ぎで5個ほど作ってくれ。」

「もう産まれるのか?まあ5個なら今日中に作れるだろう。楽しみに待っとけ。」

「あと、前に水風船を作っていただろう?あれに辛子を混ぜた物を、それも5個ほど作っておいてくれ。」

「おいおい、子供に辛子入り水風船はやめとけ。」

「子供じゃねぇ。ウリリー撃退用の道具だ。これを作れるのはお前だけだ。すぐに大量に売れる日が来るから量産の方法も考えとけ。両方今日中にやれよ。」

それだけ伝えると、サネアツの部屋を後にした。

その後、お気楽先輩魔術師3人衆に明日出かける事を伝えてから、しばらく部屋で資料作りをした。

 

 

翌日サネアツから受け取ったボールと水風船を袋にまとめて持ち、皆と合流した。

「なんだ、その荷物は?」

さっそくユエルドが指摘する。

「ウリリー撃退の試作だ。今日は俺一人でやるから皆は見ていてくれ。もしやばかったらまた閃光を出してくれ。」

「バレてたか。」

ユエルドはバツが悪そうに頭を掻いた。

 

しばらく歩くと難なくウリリーを見つけた。今度は2頭だ。

ちょうど良い数だ。

俺1人でウリリーの前に出る。2頭とも俺に気付いた。

1頭の横をかすめるようにボールを投げた。

ウリリーの横で跳ねた。ボールはピュッ、ピュッと音を出しながら遠ざかっていった。

予想通りウリリーはボールを追った。

もう1頭が後ろ足で足踏みを始めた。

すかさず水風船をそいつの顔に投げつけた。

ウリリーはけたたましい悲鳴をあげて逃げて行った。

その声に反応してボールを追っていたウリリーがこっちに来た。

1頭目と同じ要領で足踏み中に水風船を投げつける。

こちらも同じように悲鳴をあげて逃げて行った。

 

大成功だ。

「凄いな。武器も魔法も使わず追い払えるんだな。」

「ああ、これなら非魔術師でも追い払えるだろう。よし帰るか。」

 

 

帰宅後、解散してから既に書き終えていた資料と道具を持って、王国の役所へ向かった。

役所では資料をその場で見てもらえた。そもそも調査の仕事など誰一人やらないのだろう。役所の人間1人が机に向かっていたが、他は誰も居なかった。

しばらく資料を読んでいたが、最後まで読み終わったとたん叫びだした。

「これは凄い!凄いですよ!ハインツさん!!」

妙にテンションが高い。

「ああ、失礼しました。自己紹介がまだでした。私はスレイ・フォン・デルバットです。単にスレイとお呼び下さい。実はここに赴任してから誰もここを利用する人が訪れないので、これが初仕事になります。」

「ああ、そうかい。で?その資料、いくらになる?」

「信憑性を確かめる為に、この道具を実際に使ってみてから計算させていただきます。それでは今から出かけますので、また明日お越しください!!」

「おい、ちょっと待て。一人で行くのか?」

「はい。ここの部署は私1人しか居ませんので・・・」

「さすがにそれは危険だろう。俺も行く。」

「本当ですか!?ありがとうございます!!」

テンションが高すぎて耳が痛いが、悪い奴では無さそうだ。

 

そして先ほどと同じ事をスレイが行った。

水風船をウリリーの顔から外さなければ、ほぼ確実に追い払える事が分かった。

運動神経が心配なお役所の人間がやるのを見ていて思った事だが、ウリリーを目の前にしてビビらない

度胸が必要だと思った。幸いスレイは難なくこなしたので助かった。

 

役所に戻り、スレイは約束通り報酬の計算をしてくれた。

そして1枚の紙を渡された。

「この条件でどうでしょう?」

そこには40万リポと書いてあった。一般人が1ヶ月生活するのに10万リポあれば十分だ。つまり4人分の1ヶ月の生活費に相当する。

更に続きがあった。

『魔術師、非魔術師問わず、ウリリーに襲われた人の命をこの道具で救えた場合、1人につき1万リポを配当金として与える。』

これは大きい。年間40~50人の人が毎年襲われ命を落としていると言われている。

全員救えるなら毎年何もしなくても約40万リポ程度手に入る事になる。

俺が目指しているのは将来ウリリーに襲われるであろう非魔術師の命を少しでも多く救う事だった。

この道具を使って、せいぜい頑張って命を守ってくれと思った。

「良い条件だ。」

「それでは、こちらにサインをお願いします。一時金の40万リポはこちらです。」

紙とペンと封筒を同時に渡された。

俺はサインをさらりと書き、封筒を受け取って、その場を後にした。

 

 

その夜『話がある』とだけ伝えて、お気楽3人衆を引き連れ『落ちこぼれ酒場』に向かった。

店に入り席に着くと、店のマスターが注文もしていないのにビールを4つテーブルにドンッと置いた。

「サービスだ。」

そう言って奥に引っ込んだ。

「『初仕事のお祝い』ですって。」

アストリアが通訳する。何の事かと思い店内を見ると、1枚のポスターが貼ってあった。

そのポスターには『ウリリー撃退方法 考案者:ハインツ』と書いてあった。

なるほどスレイの奴、仕事が早いな。俺は有難くビールをぐいっとあおった。

「さて、皆に渡す物がある。」

そう言ってそれぞれに10万リポづつ渡した。

「こんな大金どうしたんだ?」

「今回の仕事の報酬だ。」

「マジか!?たった2回出かけただけでこんなに?」

トルキンエが目を丸くして驚いた。

「それだけじゃない。あのポスターの通りやってウリリーから身を守れたら、それだけで1人につき1万リポ貰える。それも4人で山分けだ。」

「良いの?ほとんどハインツが考えたんだからあなたが多く貰えばいいのに。」

アストリアはお人よし過ぎる気がする。

「そんな小銭で満足しては困る。明日は別の仕事をするからな。」

 

 

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