心に噺がおじゃましまっす!

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ぷるぷる大陸物語 第14話 ~無機質な巨人3(終)~

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次の駐屯所に着く頃には少し薄暗くなっていた。
「ところで他の魔術師はどうした?」
「皆帰ってしまいましたな。なにせ我々が報酬を出せないですからな」
「どういう事だ?」
「ゴーレムを倒してもただの岩ゆえ。本当に倒したのか、ただの岩を見せられているのか我々には見分けがつきませぬ。致し方ない事ですなぁ」
「そうか……」

俺は分かった事をまとめていた。
大地からプルが伸びていて、まるで大地に操られているようだった。
アストリアはゴーレムの思考が読めなかったにも関わらず、何か考えがあるようだった。
そして何より驚いたのは、目も無いゴーレムが幻影を追いかけ、まるで目で物を見ているかのようだった事だ。
大地が操っていて、目が無いのであれば、幻影ではなく大地を踏みしめている俺達に向かってくるはずだ。
知れば知るほど謎が深まっていく。


その後はプルプット村に着くまでゴーレムには遭遇しなかった。
ゴーレムが出没する場所をあえて避けて歩いたからだ。
一度村へ行ってサネアツに作って欲しいものがあった。
まあ、作らずとも村へ行けば誰かが持っているかもしれないが。


「おお、サネアツじゃねーか。ハインツも一緒か。良く帰ったな」
プルプット村へ着くと、村人が俺達を見つけて声をかけてきた。
向こうは俺達を知っているようだったが、俺はほとんど村人の顔と名前を憶えていない。

「おいサネアツ。今度は望遠鏡を作ってくれ」
「お? 久しぶりに鳥でも見るのか? 古いので良ければ家にあると思うぞ」
家と言えば、俺達は同じ家で育ったから一つしかない。村長の家だ。
村長は俺が村を出る前に代替わりしていて、サネアツの兄アキツネが村長をしている。
「鳥じゃない。ゴーレムを遠くから観察する」
近い方が色々と分かるが、自分が襲われていては落ち着いて観察できない。

俺はゴーレムの目的が知りたいと思った。
一度失敗しても、仲間を引き連れてまた襲ってきた。
どうしても俺達を殺したいという強い意志を感じたのだ。
ただの岩がなぜそんな事を思うのか。
それさえ分かれば解決できるような気がした。

「望遠鏡あるか?」
サネアツは家に入ると挨拶代わりに望遠鏡を探し始めた。
「うおっ、サネアツか、ハインツも一緒か! ゆっくりしていけるのか?」
村長のアキツネは望遠鏡の事など耳に入っていないようだ。
「望遠鏡あるか?」
俺もサネアツの真似をして、望遠鏡を探し始めた。
アキツネは無視だ。今それどころじゃない。

「まるで物取りね」
トルキンエが呆れている。
確かにここは俺の家ですらない。ただ預けられただけで俺を育てる義理なんて無い。
ただ、村長一家は遠慮を嫌う奴らだったので、俺も遠慮はしなかった。
これが俺の学んだ礼儀なのだ。文句があるなら俺を育てた奴らに言って欲しい。

望遠鏡を見つけた。
「これ、借りていくぞ。ゴーレムは俺が何とかする。ゆっくりするのは仕事が終わってからだ」
「お前ら、ゴーレムの件で来たのか!? ちょっと待て、村は俺達で何とかする。お前は首突っ込むな!」
アキツネが急に叫び出したが、サネアツが止めていたので俺は無視して家を出た。

恐らく俺の親が魔獣討伐に出かけて帰ってこなかった事と重なったのだろう。
悪いが俺はそんな失敗はしない。
「いいの? 凄く心配してくれていたけど」
アストリアが、俺の気持ちもアキツネの気持ちも分かったうえで、聞いてきた。
「当然だ。今の俺には仲間がいる。俺の親とは違う。アキツネだって俺を信じたい気持ちもあるはずだ。期待に応えてやろうぜ?」
「うん……、そうね!」

「ガーラ、この村から一番近くでゴーレムが目撃された場所に案内してくれ」
「今からですかな? もうすぐ暗くなりますゆえ、明日にしてはいかがかな?」
「この村は俺の育った村だ。この辺りは庭みたいなものだ。心配するな」
「しかし今はゴーレムが出ますゆえ、昔とは違いますぞ」
「それなら案内は要らん」
「待たれよ。私も行きますゆえ」
結局ガーラもついてきた。


俺達はゴーレムが出るという岩場を上から見下ろせる場所に陣取った。
ここからならゴーレムの動きが安全に良く見える。
暫くはその岩場にネズミがちょろちょろしているだけだった。
ネズミはチュラットという名前で、この山では特に珍しくも無い動物だ。
そういえば前にゴーレムが崩れた時もチュラットが逃げていった。

その岩場に熊がやってきた。
この熊はキラーベアという名前で、その名の通り狂暴な熊として知られている。

岩がおもむろに起き上がった。ゴーレムだ。
キラーベアもゴーレムに気付いたが、臆した様子は無い。
そこにもう1頭キラーベアがやってきた。
ゴーレムの方も俺達の時と同じ3体に増えていた。

キラーベアが先に仕掛ける。
圧倒的な力にゴーレムの胴体が吹き飛んだ。
しかし手と足はそのまま残っている。
そして残った手が振り下ろされキラーベアを直撃した。
もう1頭のキラーベアは、ゴーレム2体に挟まれ、後ろから攻撃してきたゴーレムが仲間のゴーレムごとキラーベアを攻撃した。
あっという間に狂暴なキラーベア2頭が倒れた。
仲間に攻撃されたゴーレムも崩れている。
そして、残されたゴーレムも崩れ落ちその場でただの岩と化した。

どういう事だ?
勝っても負けても、逃げられたとしても、その場でただの岩に戻るというのか?
目的がさっぱり分からない。

ゴーレムに殺されたキラーベアは無残にもチュラットの餌食になっている。
チュラットは動物の死骸を好んで食べる。
もしかしたら、ゴーレムの現れるところにチュラットがいるのはこれが目当てなのかもしれない。
労せずして食べ物にありつけるのだ。

待てよ?
なぜゴーレムはチュラットを攻撃しない?
小さすぎて標的として認識できないだけだろうか?
逆に、ゴーレムがチュラットを養う為に動物を狩っているなんて事は……。
さすがにありえないか。


「ちょっとあのチュラットというネズミを捕まえてくる」
俺は岩場まで下りて行った。皆もついてくる。

俺が近づくとチュラットが威嚇してきた。
その時だ。

チュラットの群れからプルが伸び岩を持ち上げた。
そしてゴーレムが出来上がった。

「おい、全員でチュラットを攻撃しろ!」
俺は短剣を構えてチュラットに切りかかった。
ゴーレムが腕を振り下ろすが、それをかわしてチュラットに狙いを定めて刺した。
アストリアも弓でチュラットを射抜いている。
背後から岩が飛んできた。俺はギリギリで避けて転がった。
もう人の形をしていない。チュラットもなりふり構っていない。
俺は手元にいたチュラットを1匹捕まえた。
そしてチュラットの魔法を使って、そこらじゅうのチュラットを宙に舞い上げた。
大きな岩は到底持ち上げられないが、小さなチュラットくらいなら俺の魔力でも余裕だ。
宙に舞い上がったチュラットをアストリアが次々と射抜いていく。
チュラットの数が減り、プルが薄れるとゴーレムが崩れ落ちた。

「まさかのチュラットか」
俺はやっと分かったゴーレムの正体にかなり脱力した。
アストリアは俺の心を読んでいるから分かったようだが、他の皆は未だに理解できていないようだ。
「よし、帰るぞ」
「何か分かったんですか?」
ずっと黙って心配そうにしていたスレイがやっと聞いてきた。
良いタイミングだ。
「何か、じゃない。全て分かった」


「サネアツ、チュラット獲り用の道具があっただろう? あれを大量に作ってくれ」
「なんだ? チュラットごときでゴーレム調査ができなかったのか?」
「ははっ、何言ってやがる。調査は終わった。チュラットを狩ればゴーレムも居なくなる。褒め称えてくれて良いぞ」
俺は得意げだった。
そして、スレイを含め全員に分かった事を説明した。
「ゴーレムの正体はチュラットというネズミだった。そいつらが魔法を使って岩を動かして動物を襲っていたんだ。チュラットの魔法は『土』属性とでも言えば伝わるか? 1匹では弱い魔法だが群れで使う事で大きな岩を動かしていたんだ」
「あんな小さなネズミが。そりゃ気付きませんでしたな」
ガーラが今までで一番の大声で笑った。
「流石です、ハインツさん。これでゴーレムは退治できたようなものですね!」
俺は満足げに頷いた。
「あぶない事しやがって……」
アキツネが不機嫌そうに呟いた。


その夜、村で宴が開かれた。
アキツネとサネアツ以外あまり覚えていない村人と酒を呑んだ。
皆楽しそうだった。

俺は1人宴を抜けてお気に入りの場所へ行った。
そこは少し高くなっていて、村から山の麓が見える場所だった。
昔から俺はそこから山の麓を見ては、村の外の世界に想いを馳せていた。
もしかしたら、親の本当の故郷がそこにあるのではないかと期待しながら。

いつの間に宴を抜けて来たのか、アストリアが隣に座った。
そして、何も言わず山の麓を眺めていた。
遠くから音楽が聞こえてきた。村の民謡だ。
まだまだ宴は続くようだ。

 

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『ぷるぷる大陸物語』-概要

をご覧ください。

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