心に噺がおじゃましまっす!

心の端にそっと置いてもらえるような物語を目指して書いています。

ぷるぷる大陸物語 第11話 ~プルニーのお願い~

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プルパール港町を朝日が照らす。

確実に仕事をやりきった爽快感で、すがすがしい気分だ。

 

スレイを含めた5人が集まった。


「お前に渡すものがある。受け取れ。」
俺は前もって買っておいた大きな袋をアストリアに手渡した。
「え?え?私に?」
アストリアが戸惑いながら受け取った。
袋はガシャリと音を立てた。
「お?プレゼントか?良いね~」
トルキンエが茶化すが、特に間違いではない。
「お前が女には優しくしろと言ったんだ。」
アストリアが欲しいだろうと思う物を考えたつもりだ。
アストリアとトルキンエが袋の中身を覗き込む。

 

一瞬の沈黙の後、トルキンエが笑い出した。
「あはは、はっはっはっ、ハインツらしいプレゼントだなっ」
何が可笑しい?それなりに高かったんだぞ。
スレイも覗き込んで「あっ」と驚いた。スレイは俺の味方だよな?

「ハインツさん、今回の一件でハインツさん達は支度金を事前に請求できるようになりました。その矢も請求してくれたら王国からの支給品になりますよ。」
「おお、良かった。矢って結構高いのな。20本で1万リポもしたんだ。後で請求しておく。」
「おい、もしかして女に矢を贈ったのか?」
ユエルドが呆れた目で俺を見た。
「ああ、前に弓をあげたら機嫌が直ったからな。次は矢だろう?」
「ぶっ、はははっはは、おなか痛い。」
トルキンエは盛大に笑うし、ユエルドは冷たいし、言う通りに女に優しくしたのにこの仕打ちとは。
「えっと、あの、ありがとう。」
アストリアは戸惑ったままだった。

「あのね、ハインツ。プルニーがハインツに話があるんだって。」
そう言って俺の手を握った。

 

『アスだけずるいー。』
アス?アストリアの事か。
『プルニーも魔法覚えた。風も霧も出せるようになったよ!ごほーび欲しいー!』
『おお!凄いじゃないか、もう覚えたのか!?何が欲しい?』
『えっと、欲しい物はないよー。』
『そうなのか?食べたいものとか無いのか?』
『食べ物ー?わかんない。それより、追いかけっこしたいな。プルニー逃げるからみんな追いかけてっ』
遊びたいのな。俺は昔アストリアの家に行った時にプルニーが1人で飛び跳ねていたのを思い出した。結構速い。
『よし分かった。後でやろう。』
『今がいい!』
『少し待て、やるからには本気でやってやる。楽しみに待っておけ。』
『わ~い』
追いかけっこか。色々と新しい魔法も思いついたし皆で集まってやろうと思った。

 

「そうそう、前から気になっていたんですが、魔法使いにとって杖ってどんな意味があるんですか?トルキンエさん以外杖を持っていないようですが。」
「俺は知らん。」
スレイの問いに俺は答える事ができなかった。
というのも、俺が育った村には魔術師は1人しかおらず、その人は杖を使っていなかった。だから俺も聞きたいと思っていた。
「なんだハインツ、魔術師なのに知らないのか?これは使っているとだんだんその人に馴染んで魔力が高まるものなんだよ。」
トルキンエが得意げに答えてくれた。
確かに良く見るとトルキンエを覆うプルは、手に持った杖まで伸びている。

「じゃあ、他のお三方もあったら便利ですか?せっかくなので支給しましょうか?」
「それは有難いが、俺は闇に紛れたい。杖は目立つから邪魔なんだ。」
ユエルドは苦笑いした。
「真っ黒な杖があったら欲しいですか?」
「そんな杖があったら欲しい。」
「探しておきます。」
頷いて、次はアストリアを見た。
「私は弓があるから平気です。この弓は特別な弓なので杖と同じように使っていたら魔力も高まります。」
きっぱりと言い切った。へえ、そんなものなのか。
「ハインツさん、杖欲しくなりました?」
スレイが最後に魔術師初心者の俺に尋ねた。
「俺は短剣の方が性にあってるんだが。その長い棒は邪魔くさい。」
「じゃあ、魔法を込められる短剣を作ってもらえよ。水晶を施せば杖じゃなくても魔力は高まるぞ。」
トルキンエの言葉に、ユエルドも横で頷いている。
そ、そうだったのか。

 


プルパール港町を出ようとしたところで、幼龍団が整列していた。
「町の英雄に敬礼!」
突如スタンの声が聞こえた。
「おい、何の騒ぎだ?お偉いさんでも来るのか?」
「いやいや、ハインツ君たちを送り出したいと皆が言うのでね。今回君たちが来る前から何人もの負傷者が出ていたんだ。感謝の気持ちだよ。」
「そうか、むしろ俺達が世話になったと思うが。こちらこそ、ありがとな!」
そう言って、敬礼した。お気楽3人衆とスレイも敬礼した。
敬礼の作法は知らないが、気持ちは伝わるだろう。

 


帰りのプルボードで俺は考えていた。
「今回の懸賞金は100万リポだったなよな。」
「ああ、そうだな。」
この話に真っ先に飛びついたトルキンエも歯切れが悪い。
俺達だけで解決したとは言い切れない事を、何となくみんなが感じているのだ。
「俺達はそれぞれ10万リポで十分だろ。残りの60万リポは幼龍団が受け取るべきだと思う。」
「そうだな。」
今回一番の功労者のユエルドが同意した。
「良いんですか?」
スレイの問いに皆が頷いた。
「それよりも、気になったのはこの国に海兵が居ない事だな。たかがスクジェルでこんなに苦戦するのも海の戦い方を知っている王国兵士が居ないからだろう?」
「なるほど。確かにそうですね。考えておきます。」


プルプール王国に着いてスレイと別れてから、皆が解散しようとするのを呼び止めた。
「ちょっと待ってくれ。これから追いかけっこをする。皆本気で挑むように。」
俺は神妙な面持ちで、重要な事を告げるように、遊びを提案した。
「気でも狂ったか?私はパスだ。」
トルキンエが連れない。
「待って、プルニーのお願いなの。」
アストリアが通訳する。
「プルニーも色々頑張ってるの。だから、少しだけプルニーと遊んであげて。」
「悪いが俺は遊びと思ってない。本気で挑めないなら帰ってもらって構わないぞ。」
俺はあくまで本気だ。やるからには手を抜かない。
「あーもうっ。ハインツは説明が下手過ぎ。プルニーが遊びたがってるのよ。ハインツこそ帰れば!?」
「なっなんだと?俺は色々と作戦を考えてだな…」
「遊びにそういうの要らないから。」
「はははっ。仲いいな。2人でやったら良いのに。」
「そうだな。俺は酒場で飲んでる方が性に合ってる。」
「2人とも待て。新しい魔法を考えたんだ。この追いかけっこでそれを試せたら一石二鳥だろ?やろうぜ、本気で!」
「追いかけっこには興味ないが、新しい魔法には興味あるな。良いだろう。」
「しかたねーな。んじゃ、ちょっとだけだぞ。」
よし、やっと連れた。プルニーも嬉しそうだ。

 


前にアストリアと弓の練習をした広場に移動した。
「皆どんな魔法を使っても構わない。実力を知りたいからな。まずはトルキンエに魔法を教えるからアストリアとユエルドが追いかけてくれ。始めっ」
プルニーが逃げ始めた。当然2人は追いつけない。

「さて、トルキンエ。お前の魔法を単純に説明するぞ。」
「いや、知ってるけど?」
トルキンエは何を今更、と言う感じだ。
「お前の魔法の本質は、実は治癒魔法とは違う所にある。毒を治せない事もそれが原因だ。」
「そうなのか?私は頑張ったらできるようになると思っていたんだが。」
「お前は、プルを物質に変化させる魔法なんだ。人の傷口をプルを使って埋めて元通りにしているんだ。だから腕を失った人でも治せるだろう?」
「ああ、凄い魔力を使うけどな。」
「試しにこの何もない空間に石とか出してみろ。」
「そんな簡単に言うな。だいたいプルってなんだよ。」
「前にスレイと話している時に説明しただろ、魔法の素みたいなもんだ。とりあえず、岩っぽい生物を思い浮かべて、その一部を治すイメージはどうだ?」
「はぁ?」
少し悩んでいたが、ポンッと石が出てきた。
「結構簡単だろ?」
「ああ、しかもそれほど魔力が要らない。」
「そうか。実はお前は治癒している時は神経使うから、魔力が減るというより精神的にすり減ってるだけなのかもな。」
「そんなもんかねー」
「よし、その魔法でプルニーの行く手を塞ぐんだっ!」
どんな手を使っても、俺は追いかけっこで勝つ。
『アストリア戻れ、俺達にプルニーの行動を伝えろ。』

その後は、プルニーがトルキンエの出す壁を避けて、避けた先に俺かユエルドが待ち構えた。
プルニーが何度目か風の魔法で上へ逃げた時、トルキンエが上に壁を作っていた。

べちゃ

といって、プルニーが落ちてきたところを俺が捕まえた。
「大丈夫か?」
トルキンエがすかさず治癒した。こいつはすぐ帰れる場所でなら魔法を惜しまない。
『俺の勝ちだな。』
プルニーが起き上がったのでアストリアの手を握り、勝ちを宣言した。
『もう一回!』
『まあ待て。次はユエルドの魔法を完成させたい。霧を出してくれ。』
『わかったっ』
素直で良い子だ。
すぐに辺りが霧で包まれた。

「ユエルド、この霧に光を当ててくれ。」
ユエルドは不思議そうに、それでも言う通りにした。
「光の色とか形は変えられるか?」
「ある程度ならな。」
「俺達そっくりに作ってみてくれ。」
徐々に人の形に変化して、そしてその光は俺達4人にそっくりになった。
「おお、予想以上だ。これならこれから先、動物の目も惑わせるな。」
「でも、いくらそっくりとは言え、幻影だろ?トルキンエの魔法でそっくりに作ったら良いんじゃないのか?」
「それは言うな。」
俺はそれは禁句だと思った。
ユエルドがトルキンエを見ているので、トルキンエもその気になってしまった。

そして、出した岩は星形のとても人とは思えない形だった。
「これのどこが人なんだ?」
ユエルドが不思議そうな顔をした。
どれか2つの突起が足で、別の2つが腕で、残りの1つが頭のつもりだろう。
「気付けユエルド。例え魔法が使えても画力は別の能力なんだ。」
言ったとたん、トルキンエに殴られた。

俺じゃなくてユエルドを殴れよ。俺はなんとなく気付いたからトルキンエには求めなかったのに。

トルキンエは人の傷を治す時、プルからバラバラな状態の細胞を対象に与えているに過ぎない。それを取り込んで治すのは、対象の自己治癒力に頼っているのだ。
それとは違い自分のイメージだけで物を作るとなると、上手くいかないようだ。
こればっかりは、その人の才能だ。
まあ、2人とも新しい魔法を覚えたようで何よりだ。

 

その後しばらく追いかけっこをしてプルニーを楽しませた。
もちろん全部俺達が勝ったのは言うまでもない。

 

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『ぷるぷる大陸物語』についての概要、キャラクター設定、第1話へのリンク等は、

『ぷるぷる大陸物語』-概要

をご覧ください。

 

 

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