心に噺がおじゃましまっす!

心の端にそっと置いてもらえるような物語を目指して書いています。

会話研究部 第2話 ~会話とは何か~


「ではさっそく授業を始めるとするかね」
師匠は僕が用意しておいた座布団の上にちょこんと座ると僕の目を見て話し始めた。
「さて学よ、そもそも会話とは何か分かるかね?」
いきなりおおざっぱな質問だった。なんだろう? そう言われると分かっているようでもうまく説明できない。


「人と人とが話をすることじゃないでしょうか?」
僕はできる限り正解に近い常識的な事を答えた。
「うむ、そうだな。一人では会話とは言わないだろう。まあ、ぬいぐるみやペットなどを相手に一方的に話すタイプの会話もあるが、それでも当然相手がいることに代わりはない。このように、相手がいる状態で言葉を交わす事が会話だな。では、会話の目的は何だと思うかね?」


う~~~ん? またまたざっくりとした抽象的な質問に僕は頭を悩ませた。
「たぶん、何かを伝える事が目的じゃないでしょうか?」
「そうだな。その伝える何かは時と場合によって異なるが、伝えるというのは半分正解だ。だがもう半分が足りない。もう一つは何だと思うかね?」
伝える以外のもう半分? ちょっと分からなくなってきた。


「ふむ、ではヒントだ。会話は相手が居ないと成立しないというのはさっき言ったとおりだが、二人若しくは複数人で行う行為だな。そして、伝える目的を持った人が伝えている時、他の人は何を目的にしているかね?」
「あ! 今の僕と同じですね。伝えようとしている内容を聞いて理解する事を目的としています」
「正解だ。これが会話の基本だな。このことからも分かるように会話は『話し手』と『聞き手』が必要なんだ。しかし、これだけでは会話は成立しない。もう一つの重要な要素は『テーマ』だ。話し手の伝えたい事若しくは聞き手の知りたい事が『テーマ』になるんだ。すべての会話にはこの三つの要素が必要になる」


「そんな堅苦しいのではなくて、もっと普通に話したいんですけど……」
「いや、違うぞ。普通の会話の中にも『話し手』『聞き手』『テーマ』が存在しているんだ。では試しに普通の会話をしてみようか。学は今日のお昼は何を食べたんだい?」
「おそばを食べました」
「ほう、それはうまそうだ。私も食べたいな。ところで、どこで食べたんだい?」
「学食で食べました」


「まあ、このくらいにしておくか。では、この会話の『テーマ』は何だったかね?」
「僕の昼食についてでした」
「そうだね。たったこれだけの会話にもテーマが存在するんだ。では、『話し手』は誰だったかね?」
「師匠でした」
「残念、不正解だ。『話し手』は伝える側だから学だよ。私は学の昼食について知りたい側だから『聞き手』になるんだ」
「でも、師匠の方が話している気がしました」
「良いところに気がついたね。聞き手であっても話はするんだ。それが会話ってものなんだ。口下手な学には聞き手の練習をお勧めするよ。きっと良い聞き手になれると思うね」
「聞き手なら今までと変わらないんじゃないですか?」
「無口と聞き手は全く違うぞ。うむ、しかしもう暗くなってきたな。続きは明日にしよう。私も早く夕飯を食べに行かねば逃してしまうのでな」
そう言うと窓からさっと出て行ってしまった。そう言えば師匠はどこでご飯を食べているのだろう? 明日聞いてみようと思った。

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